ドクターの経営センスが問われる時代です
消費税率が上がろうとしています。
政府は消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費増税法案を閣議決定しました。
消費税はその名の通り、消費者が消費した際に支払う税金です。
ところが消費税を確定申告して納税したという消費者はいないはずです。
それは事業者が消費者の代わりに消費税を納付してくれているからです。
事業者の方は、原則として売り上げた際に預かった消費税から、仕入れた際に支払った消費税の差額を納付しています。
つまり、事業者の方は納税の代理をすることになります。
これが間接税と言われるゆえんです。
ところが、この事業者の中にも身銭を切って消費税を納付しなければならない方々がいます。
代表的なのが医療機関です。
医療機関が薬を買ってきます。
これを患者さんに投与します。
保険診療に係る医療は消費税法上、非課税と規定されています。
私たち消費者は、保険診療に係る医療行為に対して消費税を支払う必要はありません。
事業者である医療機関は消費税を預かりません。
預かった消費税はゼロ。
支払った消費税は薬に係るもの。
本来は差額が戻ってくるはずなのですが、残念ながら日本の税法はこの差額を返す作りにはなっていません。
非課税たる医療に係る消費税については、控除してはだめという作りになっています。
これが「損税」と言われるものなのですが、一説には1病院平均で3,000万円、私立医大では3億6,000万円にも上ると言われています。
さて、消費税率が上がったらどうなるでしょうか?
10%になれば、この損税は単純に倍になります。
自分で価格を決められる事業であれば、まだ何とかなるかも知れませんが、医療は同じ治療であれば同じ金額です。
多くの病院の経営は厳しくなると予想されます。
では、防衛手段は無いのでしょうか?
実は、ほんの僅かですが、現行法でも手段が残されています。
課税売上割合に準ずる割合を上手く利用することによって、損税を減少させることができるのです。
残された防衛手段を上手く使うか、ただ手を拱いているのか、医療関係者の経営センスが問われる時代に来たのかも知れません。